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2010年02月01日

「コンパクトタウン」奄美の名瀬から那覇を見る

沖縄大学の移動市民大学で、きょうまで奄美に滞在した。

10年前、取材とヒアリングで訪れて以来の名瀬の街。
こぎれいで適当な道幅と長さの商店街アーケードは、シャッターが閉まっている
店が思ったよりも少ない。
界隈にはおばちゃんたちががんばっている服屋さんが目立った。
食品店にはソテツの実やモロミがふんだんに使われた味噌が並んでいて、
なめてみたくなる。
コロッケや天ぷら、あえものなどがガラス越しに見える惣菜店には、学校帰りの
高校生たちが集まる。
パン屋やケーキ屋も10年前にはこんなになかった気がする。

惣菜屋さんと女子高生たち
「コンパクトタウン」奄美の名瀬から那覇を見る

一緒に歩いたスタッフが、「コンビニが少ないから、落ち着くんですかね」と言う。
そういえば、街なかで見かける女子高生のスカートの長さや着こなしが普通だったり、
ビーチサンダルをはいている子もいればタイツ姿の子もいるなど、若い子の服装に
素直さが表れていることも落ち着く一因ではないかと思った。
自動車交通量はそれなりに多いが、わき道まで侵入してくる車は少ない。
街は歩きやすく、歩いて楽しい。山と海が近くまで迫り、自然とまちと人がうまく調和
していると思った。街なかを流れる川も比較的きれいだ。

わが町・那覇を振り返ってみると、なんと息苦しいことか。どこもかしこも車だらけ、
ギャップだらけで歩きにくい道。
何をするにも車を使わなければ動けない利便性の悪さ。
気軽に遊びに行ける山や川はおろか、きれいな海さえない自然環境。
観光客が買うものと県民が買うものが全く異なり、地域の台所として機能していない
中心商店街。
大量にやってくる修学旅行生も含め、画一的でやたらに短いスカートの高校生たち。

名瀬の高校生は情報を持たないのか関心がないのか、そういう盲目的に都会の子を
真似した無個性な制服ファッションは少ないようで、まちの個性を反映しているように
思えた。


神戸の高校生ファッションに似ている
名瀬の高校生の落ち着いた着こなし

「コンパクトタウン」奄美の名瀬から那覇を見る

奄美は、沖縄よりも経済的に厳しい環境にあり、過疎や衰退も進行している。
大学はなく、専門学校は2校。このため19~30歳の人口が圧倒的に少なく、これが
生産や消費に与える影響は大きい。
名瀬で服屋をやっている知人のおばちゃんに聞くと、奄美大島にある高校4校にうち
2校が少子化で統合の危機にあり、郊外に大型店やパチンコ店の出店で中心市街地の
衰退もかなり進んでいるという。
たしかに人通りは少ない。
だが、那覇は人通りが多くても、町にとって大事なものの衰退は名瀬よりはるかに酷い。
那覇と名瀬(奄美市)とでは市の規模など条件は異なるが、少なくとも無秩序な開発と
行政の不作為で住みにくさは深化している。

さまざまな面で厳しい状況が続いてきたが、少し見方を変えれば名瀬は人々が何歳に
なっても幸せに暮らせる街となる可能性を感じる。
名瀬は役所の用事も買い物も学校も文化鑑賞も、全部歩いて済ませることができる。
ある意味、理想的なコンパクト・タウンかもしれない。
那覇で、博物館と図書館両方に歩いていける人はいないだろう。
沖縄は奄美に目を向けないが、沖縄が幸福になるヒントは案外、琉球王朝時代に支配
していた奄美にあるかも。
 
ソテツの実やモロミが入った奄美の味噌
そのまま食べてもおいしかった

「コンパクトタウン」奄美の名瀬から那覇を見る

〈地域研フォーラム掲載原稿〉
  



Posted by ボララボ at 19:15│Comments(0)
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